先日の東大の修士論文の実験に追加して材料の物性試験も実施しています。
写真は「椅子型せん断試験」の様子で実験で使用した木材のせん断強度を計測しています。
治具の窓から見えている木材が無欠点小片という試験体でこの様な形をしています。
直方体の欠けた部分を押しているわけです。写真は測定が終わったものなので凹部から縦に割れています。
実験自体はシンプルなのですが、材料のばらつきの多い木材は試験に使用した材木毎に12個以上を実施しなければならず、今回は材木3本なので40体ほどありました。コンクリートのテストピースが3本一組なのでかなり数が必要です。
おかげで夜中の10時までかかることに。このあと曲げ試験と圧縮試験もあるのですが、それはまた近々実施する予定です。
高温セット法の乾燥は大丈夫?
ところで、これらの試験のための無欠点小片を試験体やそれを加工したときに出た端材から切り出すのですが、輪切りにした木片に丸鋸を入れていたら、鋸が進まなくなりこんなことに。
これは、乾燥のさいに生じる内部応力(外側と内側の乾燥の進行が異なることで縮もうとする力と今のままでいようとする力がせめぎ合う現象)ですが、最近主流となっている高温セット法による乾燥材では特に顕著に出ます。このときも丸鋸板で材料が進まないどころか押し戻されるくらい強烈な力が働きました。
高温セット法による乾燥は背割りが不要なほか、表面割れが生じにくいのでクレーム対策によいと重用されていますが、これだけ内部に大きな応力が生じていると、材木の実強度への悪影響が懸念されます。実際研究室の稲山正弘先生にこの話をしたところ、先日の木造耐力壁ジャパンカップでもこれがきっかけとなって早期に木材が破壊された例があったそうです。
稲山先生は中温乾燥で割れも生じにくく木材の強度を損なわない製材の作成方法を考案なされていますので、近々世に出てくるかもしれません。