i-木構では大規模木造のトラスや方杖などの仕口継ぎ手の形状の検討と図面作成、プレカット工場との連携を円滑にするために昨年から汎用3DCADのCADPACを導入していますが、先日腑に落ちない事がありました。

CAD/CAMが3Dデータを読めない?

とある物件でごくシンプルな加工ながら在来木造の仕口と異なる加工をプレカット加工機にさせる必要が生じました。この場合、プレカット加工機にさせたい加工形状をプレカットCADで入力・登録するのですが、当事務所で仕口の計算をしながら3DCADで形状を決めたデータを作成しているのでこれを中間データ(3DDXF)に落としてプレカットCADの担当者に渡したのですが「データが読めない」との返答がありました。DXFが読めないなんて珍しい、Ver.の問題かなと思ったのですが、何とプレカットCADには外部から3Dデータを読み込む機能そのものが無いという事でした。
どうやら今までプレカットCADデータの作成作業は、所謂「4号建築」の住宅ばかりで構造設計も構造図も作成されなかった関係で、川上の設計事務所から梁伏図などのデータを受け取るという発想がそもそも無かったからの様です。

結局3Dで設計検討して作成したデータを2次元CADに落として(意外と面倒)送信して、先方がそれを見ながらプレカットCADのデータを作成するという、かなり無駄な作業をする事になりました。


せっかく加工性まで考えて作成した3Dデータが活用できないのは虚しい

 外国製の特殊加工を行う機械では逆に設計者から3DCADデータを受け取るのが当たり前の様で、当事務所で作成した3Dデータを送ると喜ばれます。
この外国製の機械を入れている工場はどこも順番待ちで満杯なのですが、これは機械の加工スピードの問題では無く加工データ作成に時間がかかるからだそうです。

 

木造建築の加工は今後どうなる?

建築業界も業務効率化のためにBIMなどが推進されていますが、木造建築の施工現場でここまで川上と川下の電子データのやり取りが遮断されていた事に改めて驚いています。
大規模木造では仕口にかかる力のが住宅より大きく、トラスや方杖などの意匠を凝らしたデザインも多く、今後は住宅用の加工だけでは賄いきれない事態が増えていくとおもいます。複雑な加工は仕方ないにしても、普通より少し大きなほぞを作る、梁の側面を幅○mm、深さ○mmで削る等のシンプルな加工すら対応出来ない、設計側でデータを作成しても活用できないで本当に良いのでしょうか?
前述の外国製特殊加工機は意外と原始的で日本のプレカット加工機の方がロボットアームを有する非常に高度なものですが、今後は機械的には劣った外国製の機械に大規模木造の一番美味しい加工を全部取られてしまうのでは無いかと心配になります。

時代は変わりました。プレカット加工も川上の設計から降りてくる構造データを活用する方向に舵を切ってくれれば願ってやみません。