※本コラムは2014年3月にアップした旧称「木造がらみの混構造は適判無しで確認申請下ろせます」を加筆訂正したものです。

当事務所のHPでも比較的よく閲覧していただいています木造がらみの混構造のコラムですが、初出から8年近く経っており、法改正や新しい解説書・法解釈を盛り込む必要があり、このたび大幅に改定することにしました。

狭小間口等で3階建てを建てたい場合などは木造は困難なので1階をRCに2,3階を木造の混構造にしたい、適合判定の法改正でルート3以外の建物は適判無しと概ね同じ手続きになったものの、構造一級が必要なのは変わらない、という認識の方も多いと思います。

一方で鉄骨造やRC造にすると建築費が予算オーバーになってしまう、木造2階建てで地下室を作りたいのに諦めてしまう設計者やお施主さんも多いのではないでしょうか?

一定条件を満たせば混構造でも適合判定も構造一級も不要

結論から言えば、一定条件を満たせば混構造であっても適合判定無し構造一級不要で一般的な木造3階建てと同程度の審査で確認を下ろせます。混構造=適判というのは悪名高き平成19年の建築基準法改正の際そうなったという誤解が広まりましたが、実際は混構造であっても告示593号第三号と第四号の規定に従えば適判も構造一級も不要になります。

告示の運用については、整理がされておらず、当コラムでも誤解がありましたが、平成31年3月に(財)日本住宅・木材技術センター刊「木質系混構造建築物の構造設計の手引き」が発行され、明確にされました。

混構造をルート1で行うための条件

混構造をルート1で行うための条件は以下の表の通りです。

※「木質系混構造建築物の構造設計の手引き」中の表を基に作成

三号の条件をクリアできれば、木造部分と鉄骨/RC部分をそれぞれルート1で計算すれば問題ありません。また四号を適用する場合、殆どルート2の計算を行いますが、確認申請上はルート1の計算と見做して手続きします。

 

最も多いケースである壁式鉄筋コンクリート(WRC)造と木造の混構造の例で簡単にまとめると
建物の形態として

  1. 地上2~3階建てで1階をRC造その上を木造としたもの
  2. 地上3階建てで1~2階をRC、3階を木造としたもの※平成23年5月の改正で可能になりました
    注意:同一階で木造とRC造を併用している建物は適判対象になります。
  3. 最高高さが13m以下で、かつ、軒高9m以下であるもの
    注意:この条件から外れるとルート3か限界耐力でないと構造設計が実質不可能になります。
  4. 延べ面積が500㎡以内であるもの
  5. 地上部分について、層間変形角が1/200以下(損傷の恐れが無ければ1/120以下)とすること
  6. RC造の階について、Σ(2.5αAw ) + Σ(0.7αAc ) ≧ Z W Aiを満たしていること
    ※壁式RCなら問題なくクリアできます

このほかに壁式RCは仕様規定を必ず準拠する事が求められます。以前よく見られた2階床レベルにRCスラブが無い計画は、現行法では不可能ですので注意が必要です。

これらの条件はそれほど厳しくは無いと思いますがどうでしょう?

壁式RCは一貫計算ソフトを使うとプラン制限等が大きすぎ、手計算だと制限が少ない代わりに人工がかかり構造設計料が高めになるという問題がありますが、それでも総S造や総RC造にするよりは低コストで建築できるのでメリットは大きいと思います。

 

2階建てなら延べ床3,000㎡まで適合判定無しで確認を降ろせます

これも意外と知られていないのですが先の表にあるように告示593号第四号ロにて2階建て延べ床3,000㎡以下の建物も適判無しで降ろせます。この場合地震力を1.5倍して構造計算しますが、耐震等級3の構造設計が普及している現在はそれほど難しくはないでしょう。また、木造部は筋かい耐力の比率に応じて地震力の割増が発生する所謂β割増が必要になります。

500㎡超えで適判が不要になる混構造

 

地下室を作る場合の注意点

地下室付きや傾斜地で地階ガレージ付きの混構造建物の依頼もよくあるのですが、地下階を計画する際に一つ注意点があります。

一般に建築基準法上は 床が地盤面下にある階で,床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの 1/3 以上が条件ですが、構造計算の審査上はこれより厳しく確認申請上は地1階地上2階だが構造計算上は地上3階建てとして計算しなければならない場合があります。ことのき1階と2階などの必要壁量が通常より多くなりますので木造部のプランに注意が必要です。目安として地上2階建ての場合で通常の1.3~1.5倍の壁量が必要になります。

構造計算上も地階となる条件

多くの自治体や審査機関では「日本建築士事務所協会連合会:建築基準法改正に基づく構造設計 Q&A 集」に基づいて以下の条件を満たす場合に構造計算上も地階と扱っています。

①地下階の階高の2/3 以上がすべて地盤と接している場合
地下階の扱い1

②地下階の外壁全周面積の 75%以上が地盤と接している場合
地下階の扱い2

以上のどちらかをクリアしていれば良いので、計画時に配慮しておくと予想外のコスト増やプランの変更を回避することが出来ます。

 

条件を満たしていても地下階扱いされないケース

自治体や審査機関により扱いが異なりますが、以下のケースでは地下階としない場合がありますので、事前に審査機関等へ確認が必要です。

③ガレージ等で外壁の一面が全て露出している場合
地下階の扱い3
このケースでは、地下階の開けている方向に土圧がかからず、地震力が地上階とほぼ同じになると判断される場合があります。

④ドライエリアがある場合
地下階の扱い4
図のようなドライエリアを持つ建物の場合、ドライエリアの壁と建物本体が別と判断され地下階と見なされない場合があります。逆に剛な梁やスラブでドライエリアの壁と建物本体が一体と見なせるディテールであれば地階扱いに出来ます。

 

尚、構造計算上地階が地上階扱いされる場合でも、適判がかかるか否かはあくまで確認申請上の階で判断するため四号で地盤に接する面積が75%未満のガレージ等の地階が偏心率0.15を超えても適判にはかかりません

 

最後に

以上、木造がらみの混構造について簡単に解説しましたが、現在計画中の案件のある意匠設計者さんは今一度混構造を検討してみてはいかがでしょうか?

 

ご注意:建築基準法の運用に関しては念のため行政や審査機関に確認の上計画を勧めてください

 


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