中層大規模木造研究会主催の「3 階建て(準耐火)・4 階建て(耐火)木造ビルの構造計算講習会」に行ってきました。
https://www.ki-ki.info/
かなり人気で25名の定員を増員したのにもかかわらず、直ぐに満席となってしまったようです。
講師は東京大学教授の腰原幹雄先生と実際に3~4階建て木造ビルを構造設計した宮田雄二郎氏、岡本 滋史氏らでした。
この講習会は市街地に建つ間口6m、1フロア80㎡程度の3~4階建ての木造ビルを対象にしたものです。
狭小な市街地に立つオフィスビルや店舗という条件の元、梁間方向は木質ラーメン工法で内部空間に壁の無い1スパン空間、桁行方向は非開口部に24mm合板の高倍率耐力壁で構成しています。配付資料には意匠の平面図が無かったので、構図図面を元に当事務所で独自にラフプランを起こしてみました。
4Fビル平面図サンプル
構造計算は壁量計算規定を外す46条2項ルートでルート2となり確認申請を出す先が指定構造計算適合性判定機関であれば適合判定は省略できます。この規模になるとさすがに住宅向けでは無理で大断面集成材が必要になります。
3階建てモデルは1時間準耐火造のため柱梁の木材を燃え代設計としあらわしとしています。4階建ては1時間準耐火が必要になるため残念ながら構造躯体は石膏ボードで覆われる事になります。
講習で取り上げられたモデルプランは設計条件の他代表的なフレームの応力状態、部材断面の計算、接合部のディテールと計算などの資料が豊富で、特殊部分の確認申請で求められる試験成績書等の資料も上の中層大規模木造研究会のHPでダウンロード出来ます。
現状柱径が600x210が細かいピッチで必要ではありますが、木造であれば減価償却期間が短くて済む事や、必要地耐力がベタ基礎時で70kN/㎡と軽いため、基礎工事代が抑えられるなどのメリットを活かせれば、十分検討の余地があると思われます。
また、講習会では大規模木造向けの一貫計算プログラムNTTファシリティーズ総研のSEIN木造オプションと構造システムのWOOD-STが紹介されていました。これらは所謂壁量計算の仕様規定を満たせない木造ラーメンなどの46条2項ルートを使う物件を一貫計算するものです。46条2項ルートでは一般には任意フレーム解析で応力を求めた後、個々の部材や接合部の検討を別途手計算などで行うので、一貫計算で出来るのは便利ですね。どちらのソフトも現状はルート2まででルート3の保有水平耐力計算や限界耐力計算には対応していません。
現在企画が進められている中大規模向けのグレー本では壁倍率7倍を超える耐力壁を使う場合には従来の壁倍率から耐力を換算する計算はNGとなり、ガイドラインに沿ったモデル化でフレーム解析を必須とする予定のため、中大規模木造の構造設計を行うにはこれらのソフトが必要になってくると思われます。
当事務所ではアーキトレンドZEROを使っていますが、現状では上の対応は未定だそうなので残念です。
今回ご紹介した3~4階建てビルを含む
保育園・老人ホーム・店舗等の中大規模木造建築の構造設計・構造計算、事前相談を承ります。
コストダウンの他、国産材・地域材利用、燃えしろ設計、トラスフレーム計算等にも対応し提案いたします。