今回はよく相談をいただく国産杉材を梁に使って欲しいが、やはり難しいのか?について少し述べたいと思います。

杉は梁には使えないのは少し前の話

よく杉は他の木材に比べ曲げに弱くヤング係数が小さいので使えないと云われていました。少し前(2015年頃まででしょうか?)その頃までは木造建築の梁はムク材なら同じ材種のムク材のみ、集成材なら集成材のみを使うのが一般的でした。ムク材と集成材など違う材料を併用するのは施工監理上避けたかったのでしょう。

他の木材と比べヤング係数が3割ほど小さく曲げに弱い杉を梁に使うと他の木材に比べ1~2段階梁せいが大きくなってしまいます。こうなると住宅でも天井から梁が出っ張ってきてしまう問題があるほか、大きなムク材の梁は手に入りにくいという問題がありました。結果木造建築で梁にムク材を使うときは杉は現実的でなく安くてヤング係数が高い外材の米松が主に使われていました。

今はムク材と集成材の併用も一般的

これがここ最近では集成材の流通単価が下がり梁せい300mm以上のあたりからベイマツのムク材より集成材の方が安くなってきました。そうなるとコストを安く抑えたいときは監理が多少煩雑になっても梁せい300mm未満をムク材にして300mm以上を集成材とする事が多くなってきました。

集成材と併用すれば杉は梁に十分使えます

ムク材と集成材の併用が一般的になった現在、杉が苦手なスパン2間(3640mm)以上など曲げの大きな箇所は集成材に任せてそれ未満のはりせいが270mm以下の箇所を杉にしてしまえば、先ほどの問題は無くなります。また、木造建築では1間(1820mm)スパンや3尺(910mm)スパンの甲乙梁の箇所も多くそういった箇所は杉でも梁せいはさほど大きくなりません。集成材もハイブリッドビームの様な商品を使えば国産材率をかなり上げる事が出来ます。

当事務所では設計実績に挙げているおおつ保育園おおとみ保育園が梁せい270mm以下の梁に杉ムク材を使用して設計しています(上の写真はおおつ保育園の建方中の写真)。

ムク材と集成材の併用が一般化した今、梁に杉を用いるのは問題ありません。

現在伐採期になっている60年ものの杉立木は梁せい150~240mmが採れる一番玉(木の根元から4m程度から採れる丸太)や二番玉(一番玉から4m程度上の丸太)が梁として需要が無く羽柄材やペレットになってしまうという話も聞きます。建築関係者としてはもったいない話なので、当事務所としても杉製材=ムク材の梁への利用を進めて行きたいですね。

 


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