一般に建築物は意匠設計→構造設計→確認申請→申請の降りた図面で工事の相見積→着工という流れで建設コストを落とす上で相見積は重要な要素であります。
しかし中・大規模木造やスキップフロアや勾配天井、大きな吹抜空間等の技巧を凝らした木造住宅の場合、相見積を取るとコストが高くなる事があります。
プレカット工場などが決まっていないと困ること
中・大規模木造や小規模でも凝った木造建物の構造設計をする場合キモになるのは如何に流通している木材(材料)で間に合わせるか、如何に加工が楽な仕口にするか、如何に現場で施工しやすい架構とするかですが、製材屋さんがどんな材料なら調達できるか?プレカット工場がどんな加工までならできるか?施工業者がどこまでの建方までならできるか?はそれぞれの業者に得手不得手の差が非常に大きいのが現状です。
構造設計でよく困るのは、業者(特にプレカット工場)が未定な物件です。一般的な住宅であれば問題ないのですが、通常より大スパンを飛ばしたいときやスキップフロアにしたいときなどは、材料が調達や加工がどこまでできるかがわからないので、どの業者でも出来る様にする=スパンや空間構成などできないことが多くなってしまいます。
できないでは先に進めないときは材料調達や加工ができるか業者に問い合わせる様クライアントの設計事務所さんらにお願いするのですが、なかなか理解してもらえず正式発注まで業者に何も伝えないでいて施工段階になって「これ、業者にできないと言われたのですがどうしましょう」という相談をよく受けます。
凝った技巧を実現するための構造検討が
工事業者に全く伝えられないのは残念
プレカット工場などを指名した方がコストが安くて工期早い?
相見積で落札した業者=安い価格を提示した業者となるのですが、落札後に「これはできない」「あれはできない」「これは調達が間に合わない」「これは加工に時間がかかって間に合わない」となり設計変更が必要になる=当初の計画を諦める事になったり、できる業者に加工を外注する事になり結局安くすませたつもりが工事費増と工期遅延が生じる事になります。高度な加工のできる機械を入れていたり腕の良い手加工の職人抱えているプレカット工場はそれだけ見積時の価格競争的に不利で住宅向けの簡単な加工に特化した工場は有利になるのですから。
着工してから設計変更やコストアップ工事遅延がおきるくらいなら初期段階で加工するプレカット工場などを指定しておいて、そこの得手不得手を把握したうえで最適な構造設計を行った方が工事費を抑えつつスムーズな工程で木造建物が建築出来ます。
実際に当事務所で構造設計実績で紹介している物件は構造設計開始前・事前相談時点でプレカット工場を決めて、工場の担当者とどこまでできるか?どの材料がコスト的・納期的に間に合う範囲で調達できるかなどを綿密に相談しながら構造設計を進めたものです。
上の木造トラスは幅150mmの集成材が大量に必要だったため、先に必要な材積を構造計算で割り出して先行発注し、プレカット工場で極力機械加工できる様に仕口形状を決めています。
下の床6mスパンの建物は主となる梁で調達・加工できる材料と断面を確認の上構造計画を進めています。
どちらもプレカット工場未定では実現できない建物でした。
中・大規模木造建物を企画する、スキップフロアや勾配天井等の技巧を凝らした木造建築を計画する際は一度地元で技術力のあるプレカット工場などを指定してみてはいかがでしょうか?