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その1.なぜ思ったより高くなる?

その2.緩和規定と薄肉材活用

 

Q. なぜ木造畜舎を安価に建設できる合理的な薄肉材を使って任意フレーム解析をする方法が普及していないのでしょうか?

A. 木造を任意フレーム解析で構造計算できる構造設計者がごく少数だからです。

前回の記事では、緩和規定(告示474号)を活用し、流通の中間マージンをスキップする「薄肉材」と「任意フレーム解析」の組み合わせがコストダウンの切り札になることを解説しました。

しかし、この法規制とコスト上のネックを回避する「裏技」とも言える手法用いようとしたとき高いハードルが存在します。

① 鉄骨系・木造系が抱える壁と「規模のミスマッチ」

一般に日本では鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造などの建物の構造計算は、建物の形状や柱梁の断面のデータを入力すると必要な計算一式を自動で出力してくれる一貫計算プログラムというソフトを用いて行われます。しかし形状の特殊な建物は計算作業が大変な一方でより汎用性の任意フレーム解析を用いて構造計算を行います。鉄骨造を得意とする構造設計事務所であれば、任意フレーム解析は手間はかかるもののさほど難しい作業ではありません。しかし、鉄骨の鋼材が均一な材料である一方で、木材は異方性(木目方向とそれ以外とで強度や剛性が異なる)をもつ材料な上に圧縮・引っ張り・曲げ・せん断といったかかる力の性質によって壊れ方が全く異なるという非常に厄介な性質を持っています。このため、木造をあまりやらない構造設計者にとっては未知の材料を扱うリスクがあります。

一方で、木造専門の事務所なら対応できるかというと、ここにも高い壁があります。 現在の木造の許容応力度計算は、旧四号特例建物の簡易計算である「壁量計算」で使われる耐力壁の性能指標である強度と剛性がパックになった「壁倍率」という概念が浸透しすぎています。壁倍率の概念は木造の構造設計に参入する障壁を低くして不足している木造の構造設計者を増やす事に貢献しました。しかし、一方で一貫計算プログラムに頼らず建物を純粋な「フレーム」として捉え、剛性と強度を論理的に把握してゼロからモデル化する、イレギュラーな建物の構造設計のスキルに高い壁ができてしまいました。ときには計算プログラムに頼らず電卓を叩いて建物を手計算で構造計算する時代と異なり、計算プログラムでできない計算はできない構造設計者が多くなってしまったのは残念でもあります。

強風時の任意フレーム解析結果図

任意フレーム解析の様子(図は強風時のトラスの変形)

昨今の木造トラスの普及に伴い、屋根の「トラス部分だけ」を任意フレーム解析で解ける設計者は増えましたが、「木造建物そのもの」を解析できる構造設計者はごくわずかです。さらに、そのスキルを持つ構造設計者は専ら1,000㎡以上や4階建て以上の「大規模な木造建築」にかかりきりなのが実状です。結果として、木造畜舎のような比較的小型の平屋物件には手が回らないのが現状です。

 

② 接合部のボルト配置

もうひとつ難しい問題が、解析した応力を伝達させる「接合部ディテール」です。ボルトや釘、ドリフトピンなどを使った木質構造の接合部設計は『木質構造設計規準・同解説-許容応力度・許容耐力設計法-』(通称茶本)や『木質構造接合部設計マニュアル』で示されています。しかし、計算が煩雑な上に木材の割れを防ぐため、「ボルト同士の空き」や「ボルトと材端との空き(端あき・縁あき)」に対して細かい制限が設けられています。これらを自動化する市販ソフトは無く、計算ツールを自作できる構造設計事務所でないと、そもそも手が出せません。また、鋼板挿入ドリフトピン接合を用いた木質ラーメンなどの接合部は比較的断面が大きく事例も多いのでノウハウが蓄積されていますが、小径の薄肉材の接合部は規定を満たしつつ限られたスペースにボルトをどう配置するかという独特のノウハウが必要になります。

接合部マニュアルに沿ってボルト接合部の強度計算を自動で行うエクセルシート ボルト間隔、縁あき、端あきの検討をするエクセルシート

i-木構では接合部マニュアルに基づいた接合部の自動計算シートや、接合部のボルトや釘の配置検討シートなどを整備して対応しています。

 

③ イレギュラー物件の確認申請を通す力

そして、この手法を阻む最後の壁が「確認申請」です。また審査を行う確認検査機関の主事にとっても大臣認定を取ったメーカーの工法や一貫計算ソフトによらない任意フレーム解析で解いた構造計算書は日常的に見慣れないイレギュラーで敬遠されやすいです。一方でしっかり見てくれる主事はより力学的に正しいかどうか、より慎重に詳細チェックしますし質疑も構造力学の本質と木質材料の性質を正しく理解していないと回答が困難な内容になります。どんなに優れたコストダウン案も、確認申請でストップしてしまえば意味がありません。

 

まとめ

鉄骨の構造設計者は木がわからず、木造は一貫計算プログラムに頼り切った構造設計者か、大型物件がにかかりきりな構造設計者が大半。

手前味噌ですがi-木構はこうした「業界の空白地帯」も得意としており、スパン12m、700㎡クラスの木造畜舎の確認申請を、この手法で通した実績があります。

2025年法改正以降、これまでのように「計算書を出さずに済ませる」ことは難しくなりました。 「畜舎建設のコストが合わない」「従来の工法の縛りから抜け出したい」などのお悩みの方は、ぜひ基本計画から当事務所へご相談ください。法規制と確認検査をクリアし、ローコストな大空間を実現する架構計画の道筋をご提案いたします。

➔ 関連記事:日刊木材新聞に「特定畜舎の木造化提案」の記事が掲載されました

 


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